日本の伝説的シューゲイザーバンド、「東京酒吐座」(Tokyo Shoegazer)が、2011年に1st アルバム《crystallize》リリースツアー以来、約13年ぶりに来台。2月23日(金)には台北 The Wall でワンマンを行い、翌日には台中で開催されるEmergence Festivalへの出演が予定されている。この数年間、バンドは解散と再結成を繰り返していたが、その理由とは? 今回の台湾公演にかける彼らの思いとは?台湾公演前に、お話を伺わせた。
ー久しぶりに台湾に来まして、台湾に対する印象を教えてください。また、ライブ以外、台湾で楽しみにしていることはありますか?
Sasabuchi (Dr): ご飯が美味しい。夜市が楽しいですね。日本にはあのような文化が無い様な気がするので、ただ歩いているだけでも楽しいです。ライブ以外では、顔のマッサージやクリーニングをしたいですね。凄くキレイにしてくれる。最高ですね。
Watanabe(Gt) : 台湾には過去にライブで2回来ていますが、台南には一度も行けていないので温泉や風景などもとても気になっています。あとはササブチ君と重複してしまいますが、食事が本当に美味しいし、時間があれば光景が大好きな夜市にまた行けたらと思ってます。
Sugahara(Gt) : ギターロック好きがとにかく多い印象です。ギターの音が大きければ大きいほどオーディエンスのみなさんの反応がよく、日本のポストロック・シューゲイザー系のバンドも日本より受け入れられている印象です。ライブ以外では本場の小籠包を食べるのがとにかく楽しみです。
ー台中のEmerge Festだけでなく、台北でもワンマンの予定がありますが、それぞれどのようなパフォーマンスにしようと思いますか?
Sasabuchi (Dr): ワンマンとフェスでは演奏できる時間も違いますから、それぞれその場所でしか見れないショーを行うつもりです。
Watanabe(Gt) :ワンマンはとても濃密な時間にしたいし、フェスは皆さんと一緒に思いっきり楽しみたいと思ってます。
Sugahara(Gt) : 僕らの音楽は1曲の中でのダイナミクスだけでなく、ステージ全体のダイナミクスで感情を揺さぶるステージを目指しています。フェスでは演奏時間が短いので1曲入魂、ワンマンは演奏時間が長い分、より大きな感動を得られるパフォーマンスにしたいと思っています。
ー特に興味を持った台湾のミュージシャンやバンドはいますか。
Sasabuchi (Dr): 昔共演したことがあるバンドがいたのですが、そこで僕も1曲叩いた事があります。もう昔過ぎて忘れちゃったけど、良いバンドだったな。
Watanabe(Gt) :殻というバンドでTheWALLに出演させてもらったときに名前を忘れてしまったんですが、共演したバンドが良かった記憶があります。今もやってるのかな…。
Sugahara(Gt) : ElephantGymですね。日本のFujiRockFestivalのショーをWebで拝見しましたが、演奏力も曲のダイナミクスも素晴らしくとても刺激を受けました。
ーセカンド・アルバム《turnaround》のリリースから10年、《turnaround(10th Anniversary Re-Recording)》をリリースしましたが。このアルバムを再構築した理由を教えてください。また、再録の過程で新たに発見したことはありますか?
Sasabuchi (Dr) : あくまでも個人的な話ですが、当初想像していた形で発売する事が出来なかった事と、やり残したことがありすぎた事で本当に好きになれなかった。でも発売日は決まっていたから出さないといけなかった。10年間割とつらい思いをしてきたから、今回全てを払拭することと、今のバンドのポテンシャルで作り上げる事でちゃんと提示したかった。新たに発見した事などは沢山ありますが、他の人に振ろうかな(笑)
Watanabe(Gt) : 10年前は始まったプロジェクトを完了させることに注力していて、できなかったことや足りていなかったことが多くあったと思います。その分今回は今まで演奏し続けてきた曲は一番良い状態を、演奏してこなかった曲は改めて向き合いながら形にしつつ、それをアナログレコーディングできたということが何よりもバンドにとって意味があったと思っています。
Sugahara(Gt) : では僕は音響担当の立場で(笑)1stAlbumはRecordingからアナログテープで録音しましたが、2ndAlbumはProToolsで録音しました。その後の音楽活動の中でアナログレコーディングをする機会が多くあり、その音の違いは歴然でした。10周年の節目でフルアナログで制作し直すにはいい機会でした。再録にあたっては、即興演奏など新たなアレンジで作り直した曲もあったり、アレンジは同じ曲でもライブでの経験を経てダイナミクスが大きく変わっている曲もあったり、新作と言っていい出来栄えにとても満足しています。
ーコロナの影響は多くの人の生き方や考え方を変え、特に音楽業界では、デジタル配信やライブストリーミングの普及が加速しています。東京酒吐座さんの創作に関する考え方にも影響を与えているのでしょうか。
Sasabuchi (Dr) : 影響はあると思います。あと時代もありますし。デジタル配信が悪い訳ではないですが、僕はあまり好きではない。「ツール」という点では非常に便利だと思いますがすぐ忘れちゃうんです。何事もそうですが、自分で苦労して新しい音楽を見つけたりしたときの方が初期衝動も大きいし忘れない。
Watanabe(Gt) : 昔は漠然と日本や日本人に向けて作っていた気がしますが、デジタル配信が普及したことで世界中の人に聴いてもらえる機会が増えたという意味で、世界に目を向ける良い機会になったのかもしれません。ただ世界中の音楽にすぐにアクセスできるという便利な反面、データは手軽さゆえに軽く扱われるコンテンツになっているかなと思っています。僕は古い世代なので作品を実施に手にした時の感動が好きです。
Sugahara(Gt) : 良くも悪くも情報が多くなり、誰でもすぐに曲を聴けることでバンドや曲への愛着が薄まっている印象は感じます。その環境の中でより愛着を持ってもらえるような音づくりや、手にとってもらえるフィジカルでのリリースは引き続きこだわりたいと思います。
ーバンドはそろそろ15周年を迎えようとしていますが、解散と再結成を経って、その間にメンバーの何人かもCQというバンドを結成していますが、改めて東京酒吐座というバンドは皆さんにとってどのような存在でしょうか?
Sasabuchi (Dr) :東京酒吐座を解散してからCQを作ったのですが、自由度を広げたかった。「シューゲイザー」と言ってしまっている以上それをやらないといけない訳ですから、プレッシャーは大きかったかもしれない。そういう事もあり疲れてしまったので解散させた訳ですが、一番のライバルは東京酒吐座でした。自分達でも超えられない壁だったなって思います。
Watanabe(Gt) :自分達の気持ちとは裏腹に解散後に東京酒吐座はひとり歩きして、CQをやっているときは目の上のたんこぶでした(笑)とはいえ自分達のしてきた事の素晴らしさを、どちらかというと周りが教えてくれたような気がしてます。今は昔よりも関われていることを誇りに思えています。
Sugahara(Gt) :奇しくも解散したあとにリリースした作品が世界で評価された経緯があり、再結成後にタイや中国で演奏して、僕らの音楽を受け入れてくれていることを実感することができました。自分が音楽をやる理由は世界中のより多くの人に音を届けることなので、それが実現できるバンドだと思います。といってCQもストリーミング配信での再生数が伸びていることに驚いており、CQで世界のフィールドで演奏したいという欲も出てきています(笑)
ー何年経って、以前は重要だと思っていたことで、今はそれほど重要でないことは何ですか?
Sasabuchi (Dr) : やりたい事をやる。その前にまず最初に自分が気持ちよくなる事。その上で皆さんに提示をするようにしています。全てにおいて「完璧」を求めると、出来なかった時のダメージがとても大きいので今は考えなくなりました。僕達は3人だけどバンドだし「欠陥」があるから面白くなるんじゃないかと考えるようになりました。
Watanabe(Gt) :酒を飲んで演奏することですね(笑)今はそんなことしなくてもライブ中だっていつでも気持ちよくなれます。
Sugahara(Gt) :ササブチと似たコメントになりますが、正式メンバーにこだわらないことですね。バンドをやるには全員正式メンバーでパーマネントに活動できることが理想と思っていましたが、心通ったメンバー3人で他はサポートメンバーとすることでフットワークや判断も格段に早くなり、音楽に集中できているこの状態が良いと思うようになりました。
ーShoegazerをバンド名にした東京酒吐座さんにとって、Shoegazer一番の魅力は何だと思いますか?
Sasabuchi (Dr) :うまく言えないのですが、音に吸い込まれる感覚はありますね。色々な要素がハマった時は「もう戻ってこなくていいや」と思う事もあります。これは体験した人にしかわからないような気がしています。
Watanabe(Gt) :音に包まれる感覚。静と動。沢山のサウンドがリバーブやディレイで更に複雑に絡み合って生み出される底なしの奥深さ。あとはノイズやフィードバックなど一般的には汚いとされるものが美しいものとして昇華されるところ。
Sugahara(Gt) :世界で一番大きい音で演奏できる音楽ですね。よりダイレクトにエモーショナルな感情を伝えるには音量の幅が一番大きいシューゲイザーがベストです(笑)
ー台湾以外にも、韓国へ行く予定があります。 新しい年に活躍が期待されますが、今後目指したい方向性を教えてください。
Sasabuchi (Dr) :再結成する時にあたって最初に話した事は「海外で活動をする事」でした。コロナもあり足止めを喰らった時期もありましたが、徐々に有言実行できて良かったと思っています。初心を忘れず、まだ行った事のない国に演奏しに行きたいですね。
Watanabe(Gt) :東京酒吐座を求めてくれる人達がいる国ならどこにでも行って演奏したいです。
Sugahara(Gt) :とにかく世界中の多くの人に僕らの音楽を届けることです。昔は欧米に強く憧れがありましたが、アジアも本当にアツいですし、いろいろな国で演奏したいです。
ーコロナ後、日本に参戦する台湾のファンもけっこういますが、日本のおすすめの穴場があれば教えてください。
Sasabuchi (Dr) : 行きたい場所にもよるのですが・・・どこかで直接聞いていただけたら答えますよ(笑)
Watanabe(Gt) :僕も教えてほしいです(笑)
Sugahara(Gt) : 東京酒吐座の日本公演ですね(笑)日本での公演はとても少ないですが、日本でのライブはアンプの壁を作って世界で一番大きな音で聴けるのでオススメです(笑)
ー東京酒吐座のアルバムジャケットやロゴ、ライブのポスターにはよく猫が使われていますが、猫との面白いエピソードがあれば教えてください。
Sasabuchi (Dr) : すっかりこのバンドは「猫」が定着してしまいました。実は「crystallize」を作った後も同じことを言われていて、一時期嫌になった事があるんです。その反発もあって作ったのが「turnaround」だった訳ですが、それでも猫の事を言われる。「もう逃れられないんだ・・・だったらアイコン的存在にしてしまえ!」と思って、今はふんだんに猫を使うようにしています!今後、皆さんが飼っている猫の写真でも募集して、それで何か作ろうかな?と思ったりもしています。本当にやるかどうかはわかりませんよ?(笑)
Watanabe(Gt):20代の頃に猫を飼っていたことがあるくらい思い入れのある動物なので、もちろん喜んで採用します(笑)猫達も性格や個性が異なるようにアルバムも同じようで同じではないところは似ていると思います。
Sugahara(Gt) :素直にメンバー全員猫好きです(笑)特にササブチは海外でも国内でも猫がいたらひたすらじゃれ合ってますので、それがアイコンになることに何ら違和感はございません(笑)
ー台湾の皆さんへ一言お願いします。
Sasabuchi (Dr) :13年ぶりに台湾でワンマンが出来ることをとても嬉しく思っています。しかし、もう日程も迫っており、この公演を成功させるには皆様の力が必要です。是非チケットを買って遊びに来てください。爆音で皆様が抱えている悩み等を吹き飛ばしてあげます!現地でお会いできることを楽しみにしています。
Watanabe(Gt):再び台湾に行けること、皆さんの前で演奏できることをずっと待ち望んでいたので、本当に嬉しく思います。13年前に観ていただいた方も、噂だけで初めての方も、13年分の年期と想いを爆音で表現したいと思っていますので、是非その熱を浴びに来てください。一緒に楽しみましょう!
Sugahara(Gt):個人的に人生初の海外公演が台湾だったこともあり、そのときのオーディエンスの歓声を今でも忘れられません。13年と大分時間が経っていますが、その熱量が変わらないことを強く願っていますし、僕らもこの13年で音もより大きくなり、エモーショナルな演奏ができるようになったので、とにかく一人でも多くの方に会場に足を運んで気持ちのいい美轟音を浴びていただきたいと思います。
東京酒吐座リンク
文:迷迷音 MeMeOn Music
写真:Vagabond Festival 浪人祭