2020年、世界中はコロナで大きく変わった。音楽業界もすごい衝撃を受けた。2020年末、 坂本龍一 が12月12日に2020年最後のピアノコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」をオンラインで開催すると発表。メディアアートクリエイター真鍋大度が率いるRhizomatiksと提携し、業界最高レベルの音質を実現する配信サービス「MUSIC/SLASH」にてオンラインで行われる。
また、この特別な2020年を記憶に残したいという思いで、『Ryuichi Sakamoto | Art Box Project 2020』が始動する。この想いを体現したコンプリートアートボックス『2020S』もリリース決定。デザイナー緒方慎一郎、陶芸家岡晋吾とコラボして誕生した「記憶の断片」を象徴する陶器の断片もアートボックスに同封される。これは陶芸家岡晋吾が作った陶器をアメリカにある坂本の自宅へ輸送し、そこで坂本が自ら絵付け、割り、そして割った音を採取し、新曲に収録された。割って土に還するのは「壊すことから始まる」、「人は自然の一部である」という思いに呼応する。同時に、この一年間の記憶は音楽を通して、陶器の断片を通して、残すことができるようになった。
今回、坂本龍一様にインタビューすることができて、大変光栄だと思います。コロナ後の音楽活動に対する考え、《2020S》や2020年最後のオンラインピアノコンサート、そして台湾に関する思い出についてお話をいただきました!
ーコンプリートアートボックス《2020S》の構想は面白くて、ファンが陶器の断片をいただくのもパフォーマンスアートの一部で、素晴らしいと思います。「陶器」で音楽を具現化した発想はどこからきたのでしょうか。
私の叔父の一人が、一歳ぐらいの小さい頃に、家の陶器を庭の石に打ち付けて遊んでいたそうです。叔父の母、つまり私の祖母はそれを見て、「この子は音を聴いてるんだわ、耳がいいのね」と、叱らなかったそうです。その叔父は成人して数学の先生になりましたが、音楽がとても好きで、ピアノは僕よりも上手でした。
ータイトルの 「S」 はどんな意味が含まれていますでしょうか。
SはSakamotoのイニシャル。でまた今回のアートディレクションを担当する緒方慎一郎さん、作陶の岡晋吾さん、のお名前にも「S」が含まれているということで決りました。それ以上の意味はないと思います。
ーコロナの影響で、リモートワークが広がっているため、ネットワークを急速に発展させていく。その上、モバイル通信もいよいよ「5G」時代に突入。音楽業界ではVR/ARなどのバーチャルの運用がさらに重視されています。音楽を芸術作品として残していくことは、坂本様にとってどのような意味があるのでしょうか。
音楽がメディア(レコードやラジオ、今ではネット)を通して享受されるようになったのは20世紀に入ってから。まだほんの100年と少しに過ぎません。それまで人間が生まれてから何万年も音楽は常に「生」の音楽でした。この音楽の聞かれ方の激変について、2020年はより深く考えられる年になったと思います。というのは、もしかするとルネサンス以来初めて世界的に「生」の音楽が、かなり長い期間消えてしまったからです。これは音楽にとって世界的事件です。
ぼくはオンラインでの音楽のセッションやライブを、単純には喜べません。しかし、一方でこのような状況のなかでも音楽が生き残るためには、必要なハードルなのかもしれません。
ーアートや音楽は食えないし、アメリカ同時多発テロ事件や東日本大震災の時、アートや音楽を楽しむ余裕もないのですが、人類の長い歴史を考えてみれば、一度もアートや音楽を失わず発展してきた。人類にとってかなり重要な要素でしょう。年末にRhizomatiksとのコラボ生放送を行う予定ですが、この生放送は今年のも大締めになると信じています。どんな演出になるのか、できる範囲でお話していただけますでしょうか。
近年あまりやってこなかった、主にピアノの鍵盤だけを弾くコンサートになるでしょう。というのは、この数年即興に興味があり、ピアノも鍵盤でなく、内部を演奏することが多いのです。しかし、今回は鍵盤に集中し、ある意味「ベスト盤」的な内容になるでしょう。
ー「incomplete」シリーズより、台湾の音楽家lim giongとのコラボ曲〈folded dawn (折疊的黎明)〉が台湾でも話題になりました。坂本さまはlim giongについてどんな印象をお持ちですか。また、この曲を作る時、印象に残っていることはありますでしょうか。
私は楊德昌や侯孝賢のファンですから、侯監督の音楽をたくさんやられていて、出演もされている林さんを大変尊敬していました。数年前にお会いする機会があり、それ以来関係が深まりました。二人で何かもっと大きなプロジェクトをやることも話しています。林さんの最近作、畢贛さんの映画のための音楽なども、とても素晴らしいと思います。〈folded dawn (折疊的黎明)〉のために、林さんが送ってきてくださった音源も、やはりとてもcinematicなものでした。
ー最近台湾ではサウンドスケープを重視してきました。去年、映画のプロモーションで台湾にいらっしゃいましたが、印象に残っている台湾の音というのはございますか。
布農族の人たちの音楽を聴きに行きましたが、やはり忘れられない音・音楽になりました。世界にも2つとない、とてもユニークな音楽で、力強くまたとてもスピリチュアルなものだと感じました。
それと、音ではないですが、布農族の土地を訪ねるために初めて台湾の新幹線に乗りましたが、新幹線内の音、お弁当、窓から見える風景など、とても気に入りました。特に、まだ地方には、僕が子供の頃の日本のような町並みが残っているように見え、とても懐かしく、機会があれば訪ねてみたいと思いました。また、日本にそういう風景が少なくなっていることに悲しく感じました。
ー最後に、台湾のファンにメッセージをお願いいたします。
コロナウイルスの危機が鎮静化して、また台湾に演奏旅行ができる日が早く来ることを願っています。
【公演情報】
Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020
開催日:2020.12.12(土)
時間:19:30(JST)開始予定
チケット販売期間:2020.10.23(金)00:00 – 2020.12.7(月)23:59(JST)
チケット販売価格:
MUSIC/SLASH スタンダード版 5,000円(税別)
MUSIC/SLASH Premium(ハイレゾ対応)版 9,500円(税別)※日本国内のみ
配信先:日本、アメリカ、台湾、タイ、韓国、シンガポール、カナダ、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、マレーシア、香港
配信会社:MUSIC/SLASH
チケット販売:イープラス
特設サイト:https://special.musicslash.jp/sakamoto2020/cn-traditional.html
【リリース情報】
《2020S》
販売価格:200,000円(税抜)
発売日:2021.3.30
內容物:12inch盤×5枚+7inch盤×2枚
BOX 仕様: 桐木製特殊仕様の凵(箱,サイズw335 x d335 x h175mm)
特設サイト:https://shop.mu-mo.net/st/special/rsartboxproject2020/
文:迷迷音 / 写真:AVEX
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