MeMeOn Musicが2周年を迎える際、寫眞館ゼラチン初海外個展「温度」を行った。寫眞館ゼラチンは雑誌KERAや有村竜太朗(Plastic Tree)、cali≠gari、京(DIR EN GREY/ sukekiyo)……様々なバンドの写真等のカメラマンとして有名。
フィルムでの撮影、暗室での焼き付け、独特の風合いを持つモノクロの奥深い色でファンを魅了。モノクロの作品に相対して、カラフルな服装をしている寫眞館ゼラチンはとても優しく、面白い先生だ。25年以上写真を続けてきた背景には、どのような出会いがあったのか…幅広くお話をいただいた。
ーいつもカフェのような空間で個展をやっていますが、普通のギャラリーじゃなくて、カフェを選んだ理由はなんでしょうか。
カフェのように席があったりお茶があれば、お客様とお話ができたり、座りながら展示作品をゆっくり見ることができるので、最近はカフェでの展示が増えました。日本では限定のメニューを考えていただいたりと、お店全体で盛り上げていただけるので。今回、Dine in caféさんにも黒をイメージしたメニューを提案してもらってとても感動しました。
ー今回、日本での未公開作品の中で「字」をメインにした作品が多くありますね。
この作品は2016年から2017年に撮った風景です。日本人には普通に読める文字も、日本語がわからない場合、この文字は形として見ると思うんです。私も中国語がわからないので、「慢」を形として見ていました、意味ではなくて。なので、この日本語の写真も形で見せたいと思ったんです。
ー今回台湾で開催された撮影会と日本は変わりますか?
変わらないと思います。緊張する人は緊張するし、緊張しない人は緊張しないし(笑)そんなに大きく変わらないと思います。
滅び行く古いものを描く映画監督、市川崑の世界が好き
ー写真館ゼラチンさんの作品にはストーリーが感じられます。映画は好きですか。
昔観た映画を繰り返し観るのが好きなので、新しい映画はあまり観ない方ですね…
市川崑という映画監督が描く世界観が好きです。特に横溝正史原作の「金田一耕助シリーズ」。
その映画は仕事しながら今でもよく観たりしています。市川崑監督の表現する描写はいつ観ても新しい発見があるので何度観ても楽しいです。
あ、でも今年は夏の終わりに「ワンダーウーマン」を観ました(笑)とても楽しかったです(笑)
ー京さん(DIR EN GREY/sukekiyo)も映画が好きみたいです。だからその金田一シリーズの「犬神家の一族(1976)」の「佐清」と同じ名前でsukekiyoをやってるし。多分寫真館ゼラチンさんの作品で同じ雰囲気を感じたから、今回マダラニンゲンの仕事を寫真館ゼラチンさんに頼んだかもしれないですね。ちなみに、最近台灣での話題作は「The Great Buddha(大佛普拉斯)」という台灣の白黒映画です。社会問題を題材とした作品です。
面白そうですね。私の写真も基本はフェイクのないリアリティーを撮るようにしていますが、政治的なものとか報道されるようなリアリティーは撮っていません。現実なんだけど、どこか違う世界に感じる風景を見つけてシャッターを押すような感覚です。寫真館ゼラチンの世界観は何?と言われると、実は未だによくわかりません(笑)自分の目に映って「わっ」と思ったらシャッター切っているので、その感じは何と言えばいいのか、感覚というものなのか、多分簡単に言うと、「かっこいい」と思う言葉になると言のかな…..説明が難しいですね(笑)
ー多分クリエーターみんなそうですね。一言で言えば人生観。だから「The Great Buddha(大佛普拉斯)」の監督は社会問題について高い関心を持っているからこそこういう作品を作りました。寫真館ゼラチンさんの作品でも自分の人生観とは言えますね。
メディアなどはもっともっとメッセージ性の強い方を多くピックアップしているので、なかなか寫眞館ゼラチンは見つけてもらえません(笑)…….
ー台灣の映画祭もそうだし、そのほうがわかりやすいからです。難しそうにみえるけど、実はわかりやすい。自分の感性を使ってなくて、ただ情報が好き。例えば食べログに三つ星以上あるお店があって、みんな並びに行きますね。
そうなんですね…私がピックアップされないところはやっぱそういうことなんですね(笑)そんな作家なのにKEEDANさんが今回、取材という形で作家としてピックアップしてくれたのは私にとっては初めてだったので、とても嬉しかったし、台灣に来て本当によかったなと思いました。なので、少しでも早く寫眞館ゼラチンがアートという目線で見てもらえる位置まで行けるよう頑張りたいと思います。
写真:MeMeOn Music