日本のシティポップの代表的存在である Original Love は、1985年に結成された4人組バンドとして活動を開始し、1995年以降は田島貴男氏のソロプロジェクトとして展開されています。〈接吻〉、〈朝日のあたる道〉など、多くの名曲が知られている。先月は台湾で開催された第 3 回 Neon Oasis Fes(霓虹綠洲音楽祭) に出演し、 MeMeOn Music のインタビューにも応じた。
ー音楽活動を始めてから今年で35年を迎えられましたが、デビュー当時と比べて、ご自身の中で最も大きく変化したと思う点は何でしょうか?
音楽の現場と人生の経験値が増え、リズムの捉え方と演奏方法の理解が深まりました。若い頃は許せなかったことが許せるようになりました。自分のこだわりが強くなったところもあれば、こだわりが無くなったところもあります。自分の過ち、驕り、勘違いに気付かされました。あらゆるものが変わりました。20代の自分は今の自分とは別人のようです。
ーOrigina Loveさんの楽曲は、長い年月が経っても聴き手の心に美しく残るような作品であることを大切にされている印象がありますが、これまでの中で、個人的な感情を綴ったつもりが、思いがけず多くの共感を呼んだ経験はありますか?
とてもいい質問です。ある曲を作ったあと、その曲が何十年か後に時空を超え誰かに届いて共感を得る。それは作曲することの醍醐味だと思います。曲が時代を超えて残っていくことは、偶然によることが大きいとも言えます。しかし、もし作曲を志す者なら、時代を超えて人々に親しまれている曲のアレンジの衣装を剥ぎ取り、和音とメロディとリズムだけの裸の状態にした時、またはその歌詞をじっくり読んでみた時、その作り、その構成の、神業とも言える見事さに息を飲むことがあるはずです。僕は20代の頃、そういったことに没頭していました。時代が変わると「クールだと思われていたこと」、「良いことだと思われていること」、「人々に正義だと思われていること」などいろいろなものが変わってしまいます。しかし人間の心の本質は変わらない。個人が個人的にその時代に生きて、その時代を感じてその波にのみ込まれながら、同時に人間の本質まで達している表現ができれば創作においては満点です。ところがそんなことは滅多に起こりません。それが作曲することの面白味ではないかと思います。ゴルフをやったらどんな素人でも誰でもいつでもホールインワンになったらつまらないでしょう?「個人的な感情」は、「時代を超えて多くの人々が漠然と抱いている感情」に、どこかで繋がっているのだと思います。作曲をして生きてゆく者は、そういったことをどこかで意識していると思います。
ー創作に行き詰まったときや、気持ちが疲れてしまったとき、ご自身をリセットして再びモチベーションを取り戻すためにどんなことをされていますか?
最近はサーキットで車を走らせることが気分転換になっています。あとはテナーサックスを吹くことかな。
ー以前、ポップスや名曲とは、TwitterなどのSNSの文字数制限では伝えきれない感情を表現するものだとお話しされていました。最近ではショート動画が主流となり、音楽も動画に合わせた短尺化が進んでいます。イントロを省き、冒頭からリスナーの耳を惹きつける構成が求められる中、このような現象についてどのようにお考えでしょうか?
ポップミュージックが、今も人間の表現であり、人々にとって時に解放とか祈りとかの場になり得るものであるなら、そういったことはあまり深刻に気にする必要はないと思っています。昔、1950年代頃、7インチシングルが世に登場した時も、あらゆる曲を3分以内に短縮しなければならないような時代があったと聞きます。曲の構成がシンプルになると良い効果が生まれたり、洗練されたりすることもあります。ガジェットやメディアは常に変化して行きます。特に最近はそのスピードが極度に速い。そういうものとは良い距離を保って適当に付き合っていかなければ、それを使う側の人間の方が怪我をしてしまいます。
ー昨年末に、今年は新作を出したいとお話されていましたが、もし可能であれば、その方向性について少し教えていただけますか?
現在模索中です。加速化するガジェットの更新、メディア、情報、時間の変化、それに置き去りにされて困っている人間の心がヒントになっています。
ー台湾にはどのような印象をお持ちですか?台湾のファンからのメッセージやコメントで、特に印象に残っているものはありますか?
台湾には落日飛車や透明雑誌というバンドがいることは知っていましたが、今回の来台で他にもたくさんのクールなバンドがいて今も進化しているように思いました。そして Neon Oasis Fes にお集まりいただいた皆さんには心から感謝します。気持ちを新たにして、また音楽を頑張ってやっていく気になりました。台湾にこれほど多くの方が僕の音楽を聴いていることに今回大変驚きました。そしてとても熱心に聴き込んでいる人もいて感激しました。これは僕が音楽のキャリアをスタートさせた30年前には思いもよらなかったことですが、僕自身子供の頃からずっと海外の音楽に影響されてきたので、今になってこういったことが実現されて本当に嬉しく思います。
ー今回の来台で、訪れた場所や、食べてみた台湾のグルメはありますか?
やはり夜市は素晴らしかったです。台北にいる間、常に胃袋に食べ物が入っていた気がします。次回台北に来る時はもう少し郊外に出かけてみたいです。
ー最後に、台湾のファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
今回の Neon Oasis Fes で初めて台北の皆さんにお会いできて本当に嬉しかった!ご来場いただいた皆さんに、そして Neon Oasis Fes のスタッフ達に心より感謝いたします。 ぜひまた来台して白熱したライブを行いたいです!Soul Power!
Original Love
HP:http://originallove.com/
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IG:https://www.instagram.com/tajimatakao/
文:MeMeOn Music
PHOTO:Neon Oasis Fes